ぶくぶくエアレーションの欠点
初夏の収穫を終えた頃には、トマトの根はポリタンクいっぱいになり、エアレーションだけでは、どうしても水の循環が悪くなり酸欠状態になり易い。
具体的に言うと下図のように水の循環が全体的に行われず、ショートカットしてしまうのだ。
たま吉はこの問題を解決すべく、改良を試みることにしたよ。
ある工場の設備から得たヒント
ある工場の排水処理設備の水槽にスカムスキマーという装置が設置されている。
この装置は、水槽に沈められた配管の下部に圧縮空気を送ることによって、空気が配管内を上部の大気開放部まで浮力で上昇すると同時に、配管内の水が空気の泡と一緒に持ち上げられ、また同時に水槽表面の水を吸い込んで、浮遊物を除去するものであり、ポンプを用いなくても配管と空気(水圧より高い空気圧が必要)さえあれば、簡単かつ確実に水を持ち上げることができる点で優れている。
たま吉はこの原理を、水耕栽培に応用することにしたよ。
エアーリフトノズル
装置の構造は極めて簡単で、下の写真のようななものを用いるものである。
これを勝手にエアーリフトノズルと命名することにしよう。
このエアーリフトノズルは、Tの字に配管を組んでいるだけである。
ノズルの吹き出し口だけを長くして、吸い込み口は短くしてあり、横から空気を入れられるように配管を組んである。
配管の太さは、あまり太いと空気だけがすり抜けてしまうし、逆に細すぎると水が通りにくくなる。
最適な太さはいろいろ試してみる必要があるが、内径5~8ミリ程度がよいと思われる。
Tの字の配管部材は、たま吉の場合、廃材を利用しているが、ホームセンターの水やり用品コーナーか、熱帯魚売り場などに行けば似たようなものが売っているかもしれないです。
またエアーリフトノズルを取り付けるために、先端のノズルを取り外したため各水槽の空気量の調整ができなくなったので、熱帯魚用分岐装置を購入することにしたよ。
エアーリフト水耕栽培の仕組み
エアーリフトノズル水耕栽培の仕組みは下図のとおり。
水中にエアーリフトノズルが斜めに沈められていて、ノズル先端は水面から少し突き出ている。
このエアーリフトノズルの下部に空気を送ると、空気はエアーリフトノズルの中を自らの浮力と空気圧で上昇する。
そうするとエアーリフトノズル内の水は、空気の泡と共に水面に押し上げられ、ノズル先端から吹き出すと同時に、エアーリフトノズル下部のからは、水が吸引されることになるのだ。
エアーリフトノズル方式のメリット
1.酸素を取り込みやすい
エアーリフトノズルから吹き出した水は、水面にまき散らされ、水面を攪拌しながら空気中の酸素を取り込んでいく。
またノズル内を上昇した空気の泡は、吹き出し音を伴いながらノズル先端で破裂し、目には見えないミストを発生していると考えられる。
ミストは空気とよく触れるため、酸素が溶け込みやすい。
2.水循環の効率がよく、根全体に酸素が行き渡る
水槽底部は水面に接していないため、溶存酸素が欠乏しやすいが、エアーリフトノズルはこの底水をだけを吸引し、水面に持ち上げ空気と接触させるため効率がいい。
それに加えのエアーリフトノズルを斜めに設置することによって、水槽左側底部から水槽右側表層へ対角線上に水を循環することになるので、水循環のショートカットが起こりにくくなり、根全体に酸素が行き渡る。
3.立ち根が生えてくる。
エアーリフトノズル先端で破裂した泡により生じたミストが水槽内の気中をただようと、水面近くの根に、根の先端が上を向いた「立ち根」が発生してくる。
この立ち根は、空気中から豊富な酸素を含んだ水分を取り込もうとするので、植物の生長にとって極めて効率のいい根なのだ。
4.構造が簡単で、メンテナンスフリー
T字型配管のみで構造が簡単なのに、水の強制循環とミスト発生までを行うことができる。
エアーリフトノズルを実際に使用したのは10月から12月までの約3か月ほどであったが、その間トラブルはゼロであった。
ゴミつまり等のトラブルがなかったのは、たま吉のエアーポンプの吐出圧が高いことが功を奏した可能性もある。
基本的にエアーポンプの吐出空気圧は、水槽底の水圧(水頭圧)より高くなくてはならない。
水槽の水位が10センチである場合、底の水圧(水頭圧)は約1[kPa]になるので、エアーポンプの吐出圧は1[kPa]+α 以上が必要である。
ちなみに、たま吉の使用しているエアーポンプの仕様は 70kPa(0.07MPa) ,4.5L/min となっており、水位7メートルでも吐出できる能力があることになる。
5.水槽増設が簡単
十分な空気量と空気圧を供給できる1台のエアーポンプがあれば、配管を分岐するだけで、簡単に水槽を増やすことができる。
2019.11月中旬
エアーリフトノズルのデメリット
1.ノイズ
デメリットは音が少々気になる点である。
エアーポンプ駆動中は絶えずカエルが池に飛び込むような音が連続的に聞こえる。
お隣に聞こえるほどの音ではないので、昼間は特に気にならないが、夏の夜、ベランダの窓を開けて寝る場合は、少し気になるかもしれない。
2.液肥がまき散らされること
ノズル先端のから液肥の入ったミストがまき散らされるため、水槽上部をしっかりと塞がないと、水槽周辺に藻が発生しそこらじゅう緑色になってしまう。
来年は、このエアーリフト方式でどこまで収穫を増やせるか楽しみだ。