ベランダ水耕栽培⑭ 水耕栽培のメリット・デメリット
一言で水耕栽培と言っても様々なものがある。ハイドロカルチャーで観葉植物を育てたり、昔からあるようなヒアシンスの球根をグラスで育てるのも水耕栽培と言えるだろう。
その中でも野菜の水耕栽培というと、土がなくても栽培できるという利点から、屋内において、レタスなどの葉物野菜にLEDの光を当てて栽培する植物工場が注目されており、家庭用の水耕栽培キットも様々なものが売られている。
しかしLEDの光ぐらいでは、栄養価の少ないレタス程度の野菜しか育てられないし、照明や空調等にかかる費用を考えた場合、レタスを相当高い価格で買ってくれる人がいないと、商売としても成り立たないように思う。
たま吉は水耕栽培の優れた点は、直射日光下でこそ発揮されると考えている。
↑直射日光下の水耕栽培の様子
↑知人宅の地植えトマト
しかし直鎖日光下で育てるなら土で育てる方が一般的なのでわざわざ水耕栽培をする必要が無いように思われるが、、、
いったいどっちが優れた栽培方法なのだろうか?
直射日光下での水耕栽培と土耕栽培の比較
たま吉はこれまで様々な方法でトマトの家庭菜園をしてきたので、これらの経験に基づき、水耕栽培と、下記の3つの土耕栽培を様々な点から比較してみることにしたよ。
A 水耕栽培(ベランダ栽培、エアレーション式)
B 土耕栽培(ベランダ栽培、プランターに有機培養土、化成肥料で追肥の場合)
C 土耕栽培(ベランダ栽培、プランターに無機用土(鹿沼土)、液肥+ケイ酸カルシ ウムで栽培する永田農法の場合)
D 土耕栽培(畑で栽培、有機肥料の場合)
なお、比較は直射日光下で4本のトマトを栽培した場合について考える。
1.初期コストについて
A 水耕栽培(エアレーション式)の場合
水耕栽培の場合、どうしてもポンプや容器に費用が掛かってしまい、初期コストが大きくなるので、原則として水耕栽培装置は自作するものとする。
どうしても自作が苦手な人は、水耕栽培キットのようなものを購入するしかないが、直射日光下で行う水耕栽培キットの場合、たま吉が買うとしたら下記のような大型の水循環式のものを買うだろう。
水耕栽培キット ホームハイポニカ Sarah+ サラプラス グリーン 緑 ハイポニカ肥料 付 【あす楽】
水循環式水耕栽培は成長が早く、収穫量が多いので元が取れやすい、また小さい容器だと根の成長ですぐ容器が詰まってしまうからだ。
水耕栽培装置を自作する場合でも、なるべくコストを抑えたい。
最も簡単でそこそこ収穫が期待できるエアレーション式水耕栽培は、コストが低くく、1台のエアーポンプがあれば、配管を分岐するだけでトマト4本ぐらいは栽培できるので、1本当たりの初期コストを抑えられる。
エアレーション式水耕栽培を、新たに自作したときの初期コストについては、「ベランダ水耕栽培⑫」で試算したところ、トマト4本栽培で、概ね1万7千円ぐらいの費用が掛かる。
これに「ベランダ水耕栽培⑬」で紹介したミスト自動散水装置の初期費用(概ね1万円)を含めると合計 27000円 になる。
B 土耕栽培(プランター)の場合
①プランター20リットル 約1500円
②培養土20リットル 約1000円
(①∔②)×4鉢 合計 約10000円
C 土耕栽培(プランター永田農法)の場合
①鹿沼土20リットル 約500円
②プランター20リットル 約1500円
③ケイ酸カルシウム2kg 送料込み 約1000円(10年分)
(①∔②)×4鉢 ∔ ③ 合計 約9000円
D 土耕栽培(畑)の場合
①バークたい肥40リットル 約2000円
2.ランニングコストについて
A 水耕栽培(エアレーション式)の場合
①水耕水耕栽培専用肥料
トマト4本当たりの液肥消費量 約700㎖/年
⇒「ハイポニカ 4000㎖ 液肥 A・B液2本組 送料込み」 約6000円
⇒ 約1050円/年
②PHダウン剤
トマト4本当たりのPHダウン剤消費量 約100㎖/年
(ただし5月から7月前半の成長期のみに投与。)
⇒「エコゲリラ500㎖」 約1400円
⇒ 約280円/年
③電気代
エアーポンプ20W、従量電気単価26円/kWh
、運転時間 15分運転15分停止を交互に24時間
20(W) × 26/1000(円/Wh)×24(h)×0.5=6.24円
⇒ 6.24円/日(20W)⇒ 運転期間214日(4月から11月まで)
⇒ 約1500円/年
①∔②∔③ 合計2830円/年
①培養土20リットルで約1000円/年
(連作障害を避けるため、毎年土を買い替え)
②追肥に約100円/年
(①∔②)×4鉢
合計 約4400円/年
C 土耕栽培(プランターで永田農法)の場合
①液肥代
「住友液肥 2号 20リットル 送料込み」4290円
⇒ 液肥消費量 約500㎖/年(トマト4本あたり)
⇒ 約107円/年
D 土耕栽培(畑)の場合
約400円/年
3.収穫量について
それぞれの耕法でトマトを栽培した経験から、収穫量を比較すると。
水耕栽培の収穫量を「10」とすると、土耕栽培(畑)が「7」、土耕栽培(永田農法)「2」と土耕栽培(プランター)「2」ぐらいの感じだろう。
土耕栽培(畑)以外は培地の容積が同じと考えて比較しているが、土耕栽培(畑)の場合、根がどこまで広がっているかは不明なので正しい比較にはなってないかもしれない。
また土耕栽培(畑)の場合、連作障害の問題があるため、連作の場合は収穫量が「5」ぐらいに下がるだろう。
4.栽培の難易度について
(1)水耕栽培の場合
水耕栽培の場合、液肥濃度・水位の管理、水中の異物清掃、水温上昇対策、ポンプ・配管等の点検 等 を毎日行わなければならないので、他の栽培方法と比較すると難易度は「高」といえる。
特に自作水耕栽培の場合は、試行錯誤が必要だが、逆にその過程が面白かったりするので失敗を恐れず楽しもう。
プランター有機栽培の場合、とにかく夏場の蒸れ対策と、水やりの方法に注意しなければならない。難易度は「中」といえる。
(3)土耕栽培(永田農法)の場合
永田農法の場合、蒸れや根腐れは発生しにくいが、土が乾きやすいので夏場は薄い液肥を短い周期で与える必要がある。難易度は「中」といえる。
(4)土耕栽培(畑)の場合
地植えの場合は、時々追肥し、水をやるだけであるから難易度は「低」である。
5.まとめ
総合的な評価として、土耕栽培(畑)はコストが少なく、収穫も確保できるので1番評価が高いといえる。
上手に有機肥料で育てた地植えトマトの味は、甘さだけではなく、なんとなく塩味も感じるトマトらしい深い味わいがある。
しかし毎年同じ場所でトマトを育てることは、連作障害により収穫量が落ちるだろう。
マンションや一戸建て住宅のベランダにおいて、プランターでトマトの土耕栽培を行う場合は、培養土を使うより永田農法で育てたほうが土を再利用できるので、年数を重ねる毎に断然有利になる。収穫量も培養土と同じぐらいだろう。
永田農法で使用する鹿沼土は、土ではなく軽石の一種なので、通気性が高く夏場の管理が楽だ。また永田農法は土耕栽培となっているが、養液栽培の一種とも考えられるので連作障害はなく、培養土栽培のように毎年古い土を捨てる必要はない。
水耕栽培の場合は、マンションや一戸建て住宅のベランダで、地植え栽培以上の収穫が得られるのが最大の魅力だ。
初期コストは高いが、長年続ければそのうち費用は回収できるであろう。
水耕栽培の場合は、容器の大きさと、溶存酸素の供給さえ確保できれば、メロンでもスイカでも栽培できるはずである。また植物が大きく育つため、グリーンの日除けとしても活躍する。
水耕栽培が軌道に乗るまでは、試行錯誤があると思うが、工夫次第で管理の手間は省くことができる。この作業をデメリットととらえる人は、管理の楽な永田農法をお勧めする。
またイチゴ栽培のように1年から2年栽培期間が継続する場合は、電気代等のランニングコストが高くなったり、冬場の水の凍結の問題があるので、ご家庭での水耕栽培はお勧めしない。
ベランダ水耕栽培⑬ 自動ミスト散水装置の作り方と初期費用について
1.自動ミスト散水装置の必要性について
南向きベランダで水耕栽培を行う場合、夏場どうしても水温が上昇してしまう。
水温が高くなると、養液に酸素が溶け込みにくくなり植物が弱ってしまう。
養液がくさいと感じたら要注意で、酸欠になっている証拠だよ。
そのままにしておくと、やがて根がドロドロになって腐っていく。
水温上昇を防止するため、これまで水槽に銀色の保冷シートを巻き付けたり、水槽の上に板を置いて日陰を作ったりと色々試してみたけど、外気温が高いとどうしても水温は外気温近くまで上昇してしまうんだ。
水槽をクーラーや氷で冷やすわけにもいかないので、考えた末にたどり着いた方法が、水をかけて気化熱で冷やすこと。
具体的にはタンクを布で覆って、その上からミストを30分に1回10秒ほど自動的に噴霧し、布にしみ込んだ水が蒸発するときにタンクの表面を冷やすもので、これを自動ミスト散水装置と呼んでいる。
気化熱について
1gの水の水温を1℃上げるには1calが必要だが、1gの水を蒸発させるにはなんと584cal(水温25℃のとき)もの熱量が必要なんだ。
言い換えると、1gの水が自然に蒸発していったならば、その水は584calの熱量を奪ったことになるんだよ。
というわけで、自動ミスト散水装置はたま吉の水耕栽培にとってはなくてはならない装置なのだ。
2.自動ミスト散水装置の作り方&初期費用の積上げ
「ベランダ水耕栽培⑫」で、水耕栽培の初期費用を集計したのと同じ要領で、自動ミスト散水装置の作り方を紹介しながら、初期費用を積上げしていきたいと思います。
なお ミスト自動散水装置は、ベランダや庭に蛇口がない場合は設置できません。
また水道配管は、凍結破裂や紫外線劣化が無いよう金属管を使用し、自動給水弁については、確実に弁を開閉させるため工業用の電磁弁を使用していますので、長期的に使用することを想定しています。
2.1.水道元栓の閉止
ベランダや庭の既設蛇口はいったん取り外して、分岐バルブを取り付けますが、蛇口を取り外す前に水道の元栓を止めなければいけません。
水道の元栓は、マンションの場合、玄関の外側にパイプシャフトと呼ばれる扉が付いた箇所があると思います。
扉を開けると青色のメーターがあるので、自分の家のメーターのそばについているコックを閉めます。(間違って他人の家のメーターを止めないでください。)
一戸建ての場合は、玄関の外側の地面に量水器と書かれた四角い箱が埋め込まれていますので、ふたを開けて、コックを閉めます。
↑ 量水器
2.2.既設蛇口の取り外し
水道の元栓を止めたら、一度蛇口から水を出して配管の中の水圧を抜いてください。
水が出なくなったら、下図のように蛇口本体を、反時計周りに回して取り外します。
固いときは、ウォータープライヤーでつかんで回します。
2.3.分岐バルブの取り付け
蛇口を取り外したところに、今度は分岐バルブを取り付けますが、その前にネジのところにシールテープを巻きます。
(¥1,466)
(¥128)
シールテープは、ホームセンターにも売っています。
水道用のネジを閉めるときは、全てシールテープを巻きます。
巻かないと絶対漏れます。
シールテープを巻くときは、下の写真のような感じで、少し引っ張りながら2~3回ぐらい巻き重ね、切るときはそのまま引っ張ってちぎってください。
巻きつける方向も下のとおりにしてください。
シールテープが巻けたら、蛇口を取り外したところに、分岐バルブを時計回りに回して取り付けます。
完全に固くなって回せなくなる一歩手前で真直ぐになるように慎重に回します。
一度締めたものを緩めるのは、あまり良くありません。
失敗したらシールテープを巻き直せばいいだけです。
2.4.蛇口の取り付け
分岐バルブを取り付けたら、先程取り外した蛇口を分岐バルブに取り付けます。
分岐バルブの取り付けまで完了したら、水道の元栓を開けて先ほど締めたネジ部から漏水がないか確認してください。
2.5.ソケット及び異形六角ニップルの取り付け
配管口径RC1/4の電磁弁を取り付けるために、水道管の口径をRC1/2からRC1/4に小さくしていきます。
(口径の表記について:分数の部分は、配管ネジサイズの呼称で、小さいほど径が小さくなります。RCとはテーパーネジのことで、PTとも言います。)
まずソケットを分岐バルブに軽くねじ込みます。
(¥112)
次に、異径六角ニップルの両端にシールテープを巻いて、モンキースパナ等の工具で、異形六角ニップルをねじ込みます。 すると、ソケットも一緒にねじ込まれていきます。
(¥385)
アソー 異径六角ニップル 黄銅製 PT 1/4×PT 1/2 NE-1024
2.6.電磁弁の取り付け
電磁弁は様々な種類がありますが、これを選んだ理由は、CKDが信用できるメーカーであること、低価格でコンパクトだからです。
電磁弁に100Vの電源を加えると、コイルで弁体が引っ張られて弁が開き、電源がなくなるとスプリングで弁体が押し下げられ弁が閉まります。
(¥1,701)
↑ この写真は白黒なのでアルミに見えますが、黄銅製ボディを買ってください。
CKD AB21-02-2-AC100V 直動式2ポート電磁弁(マルチレックスバルブ)NC(通電時開)形
細かい仕様は下記のとおり
(型式に注意してください。間違ってAC200V仕様や、アルミボディを買わないように。)
オリフィス径とは、電磁弁の中で流量を絞っているところの径のことで、大きい径はたくさん流れますが、電磁弁が閉まった時の水流の衝撃が大きくなります。
電磁弁を取り付けるときは、電磁弁の入口と出口を間違わないよういしてください。
2.7.異形六角ニップルの取り付け
ミスト配管を取り付けるために、今度は配管口径をRC1/4からRC1/2に大きくします。
異形六角ニップルは、2.5.の項で紹介した物とまったく同じです。
2.8.ミスト散水配管の取り付け
ミスト散水配管は、様々なセットが売られています。
下記のセット(¥1,160)は、ホースが10mあるので、エアー用とミスト散水用の両方に使用しても足りるでしょう。
また、蛇口口金がついているので、前項の異形六角ニップルRC1/2にそのまま取り付け可能です。(商品説明には蛇口口金のサイズが記載されてませんがたぶん;並行ネジ 黄色G1/2・緑色G3/4です。)
ミスト散水配管の組み立て方法は、商品説明に書いてあるので説明しません。
2.7.タイマーの取り付け
2.7.1.タイマーの必要性
ミスト散水を日中ずっと吹きっぱなしにすると、水道代がかかりますし、洗濯物も干せません。
したがって、間隔をあけて自動的に噴霧する必要があります。
それを可能とするのがタイマーですが、思い通りの時刻に思い通りの時間だけ噴霧させるには、それなりに電気回路を組む必要があり、一つのタイマーでそんなに何でもできるタイマーはありません。
たま吉の場合、1日の時刻を15分区切りで、自由にON/OFFを設定できる、「ベランダ水耕栽培⑫」でも紹介した24時間タイマー
【オーム電機 OHM】オーム電機 24時間タイマースイッチ HS-AT02 04-8049
と、下のオムロンソリッドステートタイマー
(¥3,277)
☆新品☆ オムロン ソリッドステート・タイマ H3CR-A8 AC100〜240V/DC100〜125V ☆領収書可能☆
(↑※間違ってAC24V仕様を買わないように)
を組み合わせて、下記のようなタイムチャートでミスト散水を行っています。
2.7.2.タイマー回路の説明
「オーム電機24時間タイマー」がONになると、24時間タイマーにつながれたエアーポンプと「オムロンタイマH3CR-A8」とミスト散水用電磁弁の電源がONになります。
「オムロンタイマH3CR-A8」は電源が入ると、カウントを開始し、設定した時間(例10秒)後に、タイマーの中の接点を動かします。
この瞬間、回路を閉じるA接点と、回路を開くB接点が存在しますので、このB接点をミスト散水用電磁弁の電源にかましておけば、電磁弁のみ10秒後に電源が切れて「閉」になります。
その後15分が経過し「オーム電機24時間タイマー」がOFF になると、エアーポンプと「オムロンタイマH3CR-A8」の電源も切れます。
「オムロンタイマH3CR-A8」は電源が切れると、タイマーの中の接点は元に戻りますのでB接点の回路は閉じられますが、電磁弁の電源も切れているため、弁は「閉」のままです。
2.7.3.オムロンタイマH3CR-A8 の使い方
「オムロンタイマH3CR-A8」は、24時間タイマーと比べると価格は高いですが、工業用なので信頼性は高いです。
時間設定も 0.05秒~300時間 まで設定できます。(そんなに必要ありませんが)
動作モードは「A」のオンディレー動作を使用します。
「オムロンタイマH3CR-A8」の裏側には8本のピンが付いているだけなので、電線をつなぐためには、次のソケットが必要です。
(¥483)
☆新品☆ オムロン H3CR-A8用丸形ソケット P2CF-08 表面接続 ☆領収書可能☆
2.8.全体配線図
これまで紹介してきた水耕栽培装置と自動ミスト散水装置の全体配線図は下記のようになります。
展開接続図で表すと下記のようになります。
3.初期費用の集計結果
前項で紹介した部品を集計すると、9,397円となった。
自動ミスト散水装置を4本のトマト栽培に使用するとすると、1本あたりの初期費用は、2350円程度と考えられる。
ミスト散水用 | 数量 | 単価 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
1 | 分岐バルブ 普及品 |
1
|
¥1,466
|
¥1,466
|
2 | シールテープ |
1
|
¥128
|
¥128
|
3 | ソケット |
1
|
¥112
|
¥112
|
4 | 異径六角ニップル |
2
|
¥385
|
¥770
|
5 | 電磁弁 CKD AB21-02-2-AC100V |
1
|
¥1,701
|
¥1,701
|
6 | ミストシャワー |
1
|
¥1,160
|
¥1,160
|
7 | オムロン H3CR-A8 AC100-240/DC100-125 ソリッドステート・タイマ |
1
|
¥3,277
|
¥3,277
|
8 | オムロン H3CR-A8用丸形ソケット P2CF-08 |
1
|
¥483
|
¥483
|
9 | 電源タップ |
1
|
¥300
|
¥300
|
合計 |
¥9,397
|
ベランダ水耕栽培⑫ 水耕栽培装置の初期費用と作り方について
ベランダ水耕栽培と通常の土耕栽培の費用対効果を比較してみたくなったので、水耕栽培の初期費用を求めることにしたよ。
初期費用を求めるには、水耕栽培装置の構成部品の価格を1点々積み上げていく必要があるが、それらの部品の紹介しながら、同時に水耕栽培装置の作り方についても、説明していきたいと思います。
1.初期費用積上げの前提条件
1.1.価格について
たま吉の水耕栽培装置の部品は、たまたま家にあった物や廃材を使用しているので、適正な費用がつかみにくい。
したがって、初期費用の積上げにあたっては、「水耕栽培装置を作るために、部品を全て買い揃えた場合」を想定することにする。
部品の価格については、2020.5月時点での最安値通販価格とし、税込、送料抜きとしている。
1.2.水耕栽培装置について
想定する水耕栽培装置は、家庭のベランダに設置するもので、コンセントはベランダに既に設置されているものを利用するものとする。
水槽は4つで、水の循環方式はエアレーション(エアーリフト)式、栽培する植物はミニトマトとする。
水槽を4つとした理由は、水耕栽培のコストパフォーマンスを高くするためで、エアレーション方式の場合、エアホースを分岐するだけで水槽を増やせるので、水槽が多い程トマト1株当たりの初期費用は低くなるよ。
2. 水耕栽培装置の作り方&初期費用の積上げ
エアレーション式の水耕栽培装置の場合、作り方は超簡単で、下記の物をそろえさえすれば、あとはホースをつないだり、コンセントをつないだりするだけで完成するよ。
2.1.栽培用水槽
(1)水槽の大きさについて
水耕栽培でのミニトマトの成長の勢いはすごいので、水槽の実水量は1株当たり15リットル以上は欲しい。
容量が少ないと、すぐ根がいっぱいになり水が循環しにくくなるので、その場合大きい水槽の方が有利で、最終的にトマトの木も大きくなるよ。
(2)水槽の耐久性について
容器の耐久性はある程度必要で、紫外線や水の重量に耐えうるものを使おう。
たま吉は以前、衣装ケースを使ったことがあったが、1年で紫外線劣化し割れてしまったので、今は薬品用ポリタンクの側面を切り抜いて使用している。
(3)水槽の形状について
水槽の形状は、なるべく平たいものがいい。
水面広さが大きい方が、空気と接する面が大きくなるので、溶存酸素を得やすくなるからだよ。
下記の様な商品(¥2424)は安くても、それなりの強度がありそうだ。
ただし透明容器は、光が透過し水中に藻が発生するので絶対選ばないように。
(4)水槽のフタについて
上記の商品の場合、フタが付いていないので、べニア板等をかぶせるといいだろう。
フタの役割は、藻の発生防止、雨の侵入防止、虫の侵入防止等である。
フタつきボックスを買うなら、「バックルコンテナ BL-22」(1個で¥1280)が安くて強度がありそうなのでお勧めだが、新しいボックスにいきなり穴を開けるのは少々もったいない気がするね。
バックルコンテナ BL-22 ダークグリーン・クリア・エコブラック アイリスオーヤマ【時間指定不可】
(5)水槽中のトマト支えについて
水耕栽培は根が水に漬かっているだけなので、そのままではトマトの木を支えることができない。
トマトの木が小さいうちは、当ブログの「ベランダ水耕栽培②」で書いたように、発泡スチロールに穴を開けて苗を固定して水に浮かべるだけでもよいが、トマトの木が大きくなって実が着いてくると、自立しなくなるので、茎をひもで吊るすなどの対策を考えよう。
なおボックスのフタや、ひも等の雑材については、初期費用に含めていません。
2.2.エアーポンプ
4つの水槽にエアーを送るためにはそれなりの能力のエアポンプが必要だ。
たま吉が次に買うとしたら、 「安永エアーポンプ AP-30P」(¥11,800 4方分岐装置付きの場合)かな。
これぐらいの能力のポンプが欲しい、しかも静音設計。
(速報 2021.4月ついに AP-30Pを購入した。静音を期待していたが、浄化槽用なので思っていたより音が大きい。このままでは閑静な住宅街では使えないので、なんとか防音を試行錯誤中、後日追記します。)
このエアポンプは、たま吉の中古品エアポンプとは違い、エアレーション専用なので、空気量が6倍以上あるよ。
その代わり吐出圧力が、たま吉のポンプの1/6しかないけど、水槽の水位は高々15センチぐらいなので、理論上 1.5[kPa]以上 の圧力があれば空気は送れるので、このポンプの場合、圧力12[kPa]なので、余裕で4槽の水槽にエアレーション(エアーリフト)可能と考えられる。
下表はたま吉のポンプとの比較表だよ。
たま吉のポンプ APN-085VX-1 |
安永エアポンプ AP-30P |
|
---|---|---|
電圧 | 100V | 100V |
電力 | 20W | 22W |
圧力 | 70kPa | 12kPa |
流量 | 4.5 リットル/分 | 30 リットル/分 |
用途 | 医療、ガス分析用(中古) | 浄化槽、養魚関係等 |
↑ たま吉の廃材利用ポンプ
2.3.,ポンプ吐出側の継手と4方分岐装置
次に4つの水槽にエアを送るために、エアーポンプの吐出側に4方分岐装置を取り付ける。
4方向分岐装置にはそれぞれコックが付いていて、各水槽の空気量のバランス調整が簡単にできる。
水槽の空気量のバランスは水位や目詰まり等で崩れやすいので、4方向分岐装置は絶対あったほうがいいよ。
4方向分岐装置はポンプとセットで販売しているショップもあるよ。
ちなみに ポンプと4方分岐装置をつなげるための継手はポンプ付属品だ。
↑ 4方向分岐装置
↑ ポンプ付属品 内径18㎜ゴムホース
2.4.エアホース
各水槽へエアーを送るためのホースは、後日紹介するミスト散水装置の作り方でも使用する下記の様な散水セット(¥1160)に含まれるホースを使用するといいよ。
ベランダなので10mあれば、エアー用とミスト散水用の両方に使えるよ。
(商品説明には、ホース径が記載されてないが、標準サイズ内径4㎜、外径7㎜と思われる。)
2.5.エアーリフトノズル
エアホースの先端をそのまま水槽の底に固定すれば、底から空気の泡が湧き上がり水槽内の養液を循環させるエアレーション式水耕栽培装置は完成する。
たま吉の場合、自称エアリフト方式というやり方をしているので、ホースの先端にさらにエアーリフトノズルを取り付けます。
エアーリフトノズルを作るには、T字型の継手があれば簡単に作れます。
あえてネットで購入するとしたら下記のようなもの(¥299)を購入するといいよ。
ノールマグループホールディングス(ドイツ):T型異型ホース継手 ポリアセタール 型式:TRS-1210
使い方としては、下図を参照。
配管の太さは、太過ぎても細すぎても、吐出の勢いが弱くなる恐れがあるが、最適な太さは、エアーポンプの仕様によっても異なってくると思うので、実験してみないとわからない。
たま吉のエアーリストノズルの口径は吐出・吸い込みが内径8㎜、空気供給側が内径4㎜なので、ほぼ上記と同じ寸法ですが、問題なく噴出してます。
エアーリフトノズルは、トマトが大きくなり、根がいっぱいになってきたときに、水槽の底から表層へ、養液の循環を強制的に行うことができる点で優れているよ。
2.6.タイマー(ポンプを24時間運転する場合は不要)
エアーポンプは24時間動かし続けても問題ないが、たま吉の場合、少し電気代を浮かせるため、ポンプを概ね15分運転、15分停止を繰り返すようにタイマーで制御している。(後日紹介する自動ミスト散水装置もこのタイマーを使って噴霧させている。)
仮に「安永エアーポンプAP-30P」を、24時間運転した場合、電気代は、従量料金単価 26.5円(税込)/kWh として、ポンプが20Wなので、下記の計算となる。
20W × 24時間 × 214(5から11月)日 × 26.5円 ÷ 1000
= 2722円(年間)
タイマーのおすすめは下記の商品一択である。
激安価格で 約¥800 になっているときもあり、オーム電機は昔からあるメーカーで信用できるし、設定方法も超簡単。
時刻表示の外側にある、白と青のカラフル部分に爪が96個付いているので、任意の時間帯の爪を起こすとその時間帯のみ、右横のコンセント差し込み口が通電状態になる仕組みだ。
2.7.電源タップ
ポンプやタイマーは水気厳禁であるため、屋外の防水コンセントを使用する場合は、電源タップ(約¥300)で延長して、タイマーは雨のかからない場所に置くか、箱の中に設置する必要があるよ。
3.初期費用の集計結果
前項で紹介した部品を集計すると、17,680円となった。
(必要最低限の場合、15,684円)
したがってトマト1本※あたりの初期費用は、3900~4400円程度と考えられる。
(※ 1つのエアーポンで4本育てた場合)
ベランダ水耕栽培 に必要な部品 |
数量 | 単価 | 金額 (税込、送料抜き) |
備考 | |
---|---|---|---|---|---|
1
|
水槽 Boxコンテナ |
5
|
¥2,424
|
1個予備 | |
2
|
安永エアーポンプAP-30P |
1
|
¥11,800
|
¥11,800
|
|
3
|
継手、4方分岐装置 |
1
|
上記に含む | ||
4
|
ミストシャワーセット
|
1
|
¥1,160
|
¥1,160
|
※ホースのみ使用 |
5
|
T型異型ホース継手 |
4
|
¥299
|
¥1,196
|
エアリフトしない場合は不要。 |
6
|
オーム電機 24時間タイマースイッチ HS-AT02 04-8049 |
1
|
¥800
|
¥800
|
ただし24時間運転する場合は不要。 |
7
|
電源タップ |
1
|
¥300
|
¥300
|
|
合計 |
¥17,680
|
ベランダ水耕栽培⑪(エアーリフト方式始動)
今年はコロナで大変な年になりそうだ。
こんな時、自宅で新鮮な野菜を収穫できる家庭菜園のありがたさが身に染みる。
さて昨年、水耕栽培のスタートが遅れたのを反省し、今年はホームセンターをこまめにチェック、トマト苗が出回るのを待っていたところ、4月3日、ついにトマト苗を発見。
すぐに3苗を購入。
今年はお遊びなしで、全てトマトを育てることにする。
昨年はナスビも水耕栽培していたが、ナスビはそんなに収穫できないし、安いので店で買った方がいい。
昨年1苗50円ぐらいの安物トマトとサントリートマト(298円)の収穫を比較したところ、夏以降の収穫に差があったのでサントリートマトを選んだよ。
↑2020.4.11
水耕栽培を行うため、ポットの土は根を傷つけないように、あらかたシャワーで洗い流してから、水に浮かべて一週間はこのまま水に慣らすことにする。
水には微量に液肥を入れたよ。
しばらくすると水耕栽培に適した白く太目の根が生えてくるはずである。
一週間後、いよいよ水耕栽培を開始。
いきなり大きな水槽に小さな苗を浮かべるのは効率が悪いので、3苗まとめて小さな発泡スチロール製の保冷箱に穴を開けて、スポンジで苗を固定することにしたよ。
今年の注目ポイントは、下の写真の右手のT字型の配管である。
たま吉はこれをエアーリフトノズルと名付けている。
こいつの役割は「ベランダ水耕栽培⑩」で詳しく解説しているが、簡単に言うと空気圧で、水を飛ばし、攪拌と噴霧を行うノズルである。
発泡スチロールの蓋にエアー配管を突き刺して、エアーリフトノズルをセット。
エアーポンプは、タイマーで15分運転、15分停止を繰り返すようにセットした。
理由は、電気代がもったいないからである。
まだ少し気温が低いので、急には成長しないと思うが、エアーリフトノズルの効果がどれほどのものになるか楽しみだ。