分銅式ガット張り器②「HandsWin S-60」の使い方
ここからは、実際に分銅式ガット張り器「HandsWin S-60」を使ったガットの張り方を説明するよ。
メインにAKPRO16、クロスにシグナムプロ HYPERION(1.23mm)のハイブリッド張りで、どちらも58LBで張っていきますが、ノットの結び方等基本的なことは省略します。
1.ラケットをガット張り器に固定する。
下の写真の説明のとおり、ラケット支持部でラケットを固定する。
ちなみに「HandsWin S-60」はバトミントンラケットにも対応している。
2.テンション(張力)を設定する。
分銅の矢印の位置を、設定テンション(LB)に合わせて分銅を固定する。
3.メインストリングをグロメット穴に通して、ストリングを手で軽く引っ張った状態にして、ダブルストリングクランプで中心の2本を同時に挟む。
〈ダブルストリングクランプについて〉
ダブルストリングクランプは、一度つかむと手を放してもつかんだままになり、レバーを押すと解放されるバイスプライヤーと呼ばれる一般的な工具を改造したもので、分銅式ガット張り器で使用するためにグリップ部は独特な形状になっていて、ストリングが滑らないように、両表面にザラザラの加工を施した金属が中央にはさまっている。
つかみの強さ(つかみ幅)は、ハンドルの後ろにある六角穴ボルトの締め具合で微調可能。
4.ストリングの片側をグリッププレート上に引っ張ってくる。
〈グリップ機構部について〉
グリップ機構部は、ストリングをつかんで設定したテンションで引っ張り、保持する「HandsWin S-60」の核となる部分なので詳細な写真を載せておく。
すべて金属パーツを使用し堅牢かつ精密にできている。
グリップ機構部はテンションロッドを起こさない限り、魚釣りで使うリールと同じように逆回転(正面から見て反時計回り)しない構造になっている。
5.グリッププレートのピンにストリングを1周巻き付ける。
6.巻き付けたストリングを今度は、グリッププレートの下に通す。
7.手前の黒いハンドルでグリップ機構部を時計回りに回すと、グリッププレート上のストリングにテンションがかかるので、それまでバネで浮いていたグリッププレートが下に押し付けられ、下側のストリングが挟まれる。
8.ある程度の位置まで回すと、ストリングのテンションでハンドルが重くなる。
9.ハンドルから手を放す。
手を放しても、この時すでにグリップ機構部にはテンションロッドと分銅の重さが作用しているため戻らない。
しかしまだテンションロッドは床に着地しているので、ストリングには全荷重はかかっていない。
これからさらに強いテンションを加えるために、分銅の力を使っていく。
そのためには分銅を床から持ち上げてテンションロッドを水平にする必要がある。
しかしこのままテンションロッドを持ち上げると、グリップ機構部も一緒に反時計回りに動いてしまうため、テンションがゆるんでしまう。
10.グリップ機構部にストッパーをかける。
テンションロッドを持ち上げても、グリップ機構部が反時計回りしないようストッパーをかける。
このストッパーも「HandsWin S-60」独自の便利な機能である。
11.ストッパーをかましたまま、テンションロッドを水平位置より少しだけ高く持ち上げる。
12.テンションロッドとストッパーから手をそっと放す。
手を放すと、ストリングにはテンションロッドと分銅の荷重がかかり、ストッパーはバネで解放される。
この時、テンションロッドが水平になっていれば、ストリングには設定テンションがかかった状態になる。
13. テンションロッドが斜め下に傾いているときは、まだ設定テンションに達してないので、もう一度ストッパーをかまして10項から作業を繰り返す。
この作業多少しんきくさいが、これこそが分銅式ガット張り器の利点。
ガット張り中にガットがゆるんできたときテンションをかけたまま設定テンションに調整することは、バネ式の様に最初の引きでテンションが決まってしまう方式ではできない。
つまり分銅式は高級な電動式と同じことができるというわけ。
14.設定テンションになったら、ストリングをダブルストリングクランプで下の写真のとおり、なるべくフレームの際ではさむ。
15.テンションはクランプで保持されたので、グリップ機構部を解放する。
ストッパーをかまさずにテンションロッドを持ち上げると、グリップ機構部が反時計回りするので勝手にストリングが解放される。
16.もう片方のストリングにも同様にテンションをかける。(4~13項を参照)
17.もう片方のストリングのテンションロッドが水平になったら、中央のクランプを解放する。
18.テンションロスを取り除く
テンションロスは、グロメット部での摩擦や、張力が発生してない区間によって生じる見えないゆるみです。
このゆるみは引っ張ったままの状態で、ストリングを直接手で広げて取り除く。
ゆるみを取り除くと、ストリングが伸びるのでテンションロッドは少し下がってくるので、もう一度ストッパーをかまして10項からの作業を行い、テンションロッドを水平にする。
19.テンションロスを取り除き、完全に設定テンションになったら、フレームの際でクランプをはさむ。(最初のこの時だけクランプ同士が近すぎて、少々はさみにくい。)
20.全く同様の作業でどんどんストリングを張っていく。
その都度、テンションロスは取り除く。
21,最後にテンションをかけるときは、結びの部分で生じるゆるみと相殺するため、分銅を4lbぐらい高めにセットする。
設定テンションになったらクランプする。
22.メインストリングの結びの穴(ラケットによって位置が異なる。)にストリングを通す。
ストリングを斜めにカットし、ラジオペンチでちょっとずつ押し込んでやると通し易い。また先にオウルを突き刺してクセをつけてやると通し易くなる。
23.メインストリングを結ぶ
結び方は、特に解説しないが、グロメットにめり込まないダブルノットがお勧めだ。
~ ここからはクロスストリングだよ。~
24.クロスストリングの最初の結び
この結び方は、「HandsWin S-60」を買ったときに取扱説明書に記載されていた独特な結び方で、グロメットにめり込みにくく、たま吉も気に入っているので紹介しておくよ。
25.クロスも同様の作業でテンションをかけていく。
たま吉はハイブリット張りと言って、メインとクロスに別のストリングを張っているが、クロスストリングがポリエステル素材なので、針金のようにクセが付きやすく、グロメット部でのテンションロスが特に生じやすい。
したがって緩み取り作業は入念に行う必要がある。
下の写真はクロスストリングに最初のテンションを加えたところ。
テンションロッドが水平になっているので設定テンションがかかっているはずだが、、、
ここでグロメット部での摩擦によるテンションロスを取り除くために、テンションをかけたままストリングを手前に引っ張ってストレッチをかけると、
ゆるみが取れてストリングが伸び、テンションロッドがまた下がってしまった。
これがテンションロスがあった証拠なのだ。
ゆるみが取れたらクランプではさむ。
クロスのストリングをはさむ場合、メインストリングをよけて下の写真のように先端でつかむことになるので、クランプのつかみ強さ(つかみ幅)を調整する必要がある。
26.最後にクロスストリングを結んだら終了。
結ぶ前には4lb程テンションをアップしてからクランプすることを忘れずに。
ダブルノット